萩原 義雄 識

漢字は日本人としてアジア東北端の国「日本」に到達し、定着するうえで、仏教の経典そして、中国の漢籍が伝来し受用してきた背景に深く関わっています。このことに関わった人物像として、聖德太子、弘法大師空海という人物がその代表格として今日まで学びの中核に位置してきました。その資料も第一級として現在に伝えられてもいます。『法華義疏』、『篆隷万象名義』という漢字注釈書と字書がそれです。

此の漢字が最初は一握りの知識人が嗜み書き読みしてきたのが、江戸時代の寺子屋教育が庶民全般まで拡張させることに至ったのです。

江戸時代には京都・大坂・江戸の三都から出版刊行された数知れない書物や字書類を見比べていくとき、その漢字教育を目的とした遠大な文字学習の展開状況を知ることができます。

この一つ、氷山の一角ではありますが、世界中の国々に生まれ育った人が漢字を知り、此を学ぼうと目指したときにと思いを馳せ、その一部を示しますと、
 
①字の本を記す分・・・・・・
【志】本は之心に作れり後人之を士に作る
【笑】下は夭なり犬にかくは非也
【上下】卜の字を一の上下につきたるは以てわかつなり
②相似てちがう字の分・・・
【矢失(シシツ)】下なる字はタテノ点ヲ上へイタス也
【笞苔】上はムチなり下はコケなり
【筧莧】上はカケヒ也下はヒユなり
③字意を記す分・・・・・・・・
【諺】世人のカタルことばなり
【冷】月のサヘルを云
④童蒙あやまる字の分・・・
【鍛冶】カヂはテツをキタヘル者なればタンヤとかくべきを世人あやまりて鍛治とかくなり相似る字なるゆへよみあやまりて云なるべし
⑤字を作る心を記す分・・・
【東】日は東より出るなり五行にては東は木なるゆへに木に日を加へて作る也
【出】山の上に山をかさぬれば高く出て四方よりみゆるゆへイツルとよむ也
⑥字音假名つかひにの分
△ワウのかなを用る分【徃王誑横黄央殃奥懊狂】
△ヲウのかなを用る分【應雄擁癰】
 
として、こうした六つの基本的事象を学んでいくことで、より理会しえていくことへと繋がっていきます。昨今、難しい漢字はと云えば、「連覇」を「連パ」、「雪庇」を「雪ピ」、五味の一つ「旨味」を「うま味」、「拉麺」を「らぁ麺」と混ぜ書き表記することで、ますます誤って読んでいると思うのですが、夏真っ盛りのなかで漢字への識字力アップして楽しむのも一見と考え添えてみました。
 
最後に、

は字音「サウ」で倉にカクナリ。
は字音「ソウ」で「糟にカクナリ」
は字音「ライ」で「雷にカクナリ」
 
と古文新文二様あって上達度が上がってから漢字に親しみ楽しんでほしいというおまけです。そして、「社員食堂」をちぢめて「社食」、「学生食堂」は「学食」って云う省略漢字もあります。