萩原 義雄 識

日経速報ニュースの記事のなかに、

高精度に文化財を複製してきた、東京芸術大学の「クローン文化財」が進化を続けている。精巧な複製にとどまらず、最新技術や研究成果を駆使して制作当時の姿を再現。「スーパークローン文化財」として、国宝の仏像の一四〇〇年前の姿や戦争で焼失した絵画をよみがえらせている。デジタルテクノロジーと芸術家の技を融合させた作品は、新しい芸術の形としても注目を集めている。

という新聞記事が目に止まった。吾人達、日本人がこの日本列島で保全してきた大陸伝来の高度な文化財を再び、世界中の国々にお返していくための準備が整ったという氣がした。亡佚するのではなく、同じ立場で精緻な品々を共有していくのだ。ここからは新たな共感覚を基盤とした多様性のある物事を見据えた取り組みも生まれてくる。東アジアの端から地球の隅々に届けていくとき、ジグソーパズルのように同じものどうしが組み合わさっていく。人が人として多少変化した箇所があっても、波長は波長を同調させていく。今はまだ空想の産物かもしれないが、焼けて炭素化した物品であろうとも、板状になった古き書籍でも具現化できる時が近未来に見えてきている。

今から二〇〇年の昔、数値も億兆(オクチヨウ)は平生用いないものであったように、九九算も日用の利便さで身につけきている。「事○、使○、有○、在○」も心得てきた。さらに、或人北野に詣でて「東行西行雲渺々二月三月日遲々」と云ふ漢式和文も神詠を誦して、少しく微睡みしとき夢に神現じ、「とざまにゆき、かうさまにゆきて、雲はるばる、きさらぎやよひ、日うらうらと」と詠むを知るとすることも学び来た。漢字書記文字も「天夭」「矢失」「爪瓜」「干于」などの異字も聞き分け、使い分けする。極めつけの「卯印卵卯邛(バウインランカウケウ)」文字もだ。人名「昴(すばる)」字も「日」に「卯(カウ)」「邛(ケウ)」では困ってしまう。「襷」字のような難字も何度も見聞し、己れが使っていくと、馴染みたる域にすんなりと落ち着く。

端午から初夏へと一氣に気温も上昇し、戸外で過ごしやすき時となる皐月だが、緑翠色の景観のなかで、何かを見据え、何かを見定めて、何かを求められるかは己れ自身にあり、時間は皆さま一様に与えられている。チャンスをチャンスとし、チャレンジしてみよう。空想が現実化して行く時を愉しんで欲しい。
 
《画像資料》

武者小路実篤所蔵
ピカソ画「ひまわり」消失絵画の複製化

五地域で用いるゼン字
  

 
《補助資料》
幻のゴッホ「ひまわり」の絵画は、今夏にそごう美術館(横浜市)で「スーパークローン」の最新作として公開。
【現代語訳】(私達の身の上のように)雲はあちらへ行き、またこちらへと遥かに空を漂い、陰暦二月、三月の春の頃のこととして日あしはうらうらと照っていかにものどかである。〔『菅家後集』白居易(白楽天)の北窓三友の詩を読む〕。『江談抄』第四・二三九や『今昔物語集』『今昔物語集』の二十四巻-第28話に所収する。上田敏の「海潮音」の序に「訳述の法に就ては訳者自ら語るを好まず。只訳詩の覚悟に関して、ロセッティが伊太利古詩翻訳の序に述べたると同一の見を持したりと告白す。異邦の詩文の美を移植せむとする者は、既に成語に富みたる自国詩文の技巧の為め、清新の趣味を犠牲にする事あるべからず。しかも彼所謂逐語訳は必らずしも忠実訳にあらず。されば「東行西行雲眇眇(びようびよう)。二月三月日遅遅」を「とざまにゆき、かうざまに、くもはるばる。きさらぎ、やよひ、ひうらうら」と訓(よ)み給ひけむ神託もさることながら、大江朝綱(おおえのあさつな)が二条の家に物張の尼が「月によつて長安百尺の楼に上る」と詠じたる例に従ひたる処多し。」継承する。