萩原 義雄 記

今年の東京の夏は、凉暑なのか猛暑なのか検討がつかない。気象庁も梅雨明け宣言を今日明日と氣を揉んでいる。太陽の照りつけ、陽射しが強まればだくだくの汗も流れ出すのに、暑くなったと思いきや、北の風が強く張りだし、南の風を寄せつけない。人の暮らしも氣候に左右されて暑さを増せば飲料も食材もうなぎ登りとなるはずなのに、これが当てが外れ、売れ行き不振。氷り水も、氷の生成にマイナス二度くらいで凍った氷が旨いという。マイナス七度、八度と下げて凍らせた氷では人のからだにキーンとして見合わないという。

草とりとはいうものの、夏草は否応なしに伸び、元気さを増してきている。鎌を手に夏草とりは、夏の到来と同時の風物詩であった。あの刈草があたりに一面に立ちこめる匂いも棄てたものでは無かった。徳冨蘆花著隨筆『草とり』に「年々や桜を肥す花の塵」と言わせる「草」であり、「一挙に草を征伐するには、夏の土用の中、不精鎌(ぶしようがま)と俗に云ふ柄の長い大きなカマボコ形の鎌で、片端からがりがり掻いて行く」とある。鎌は手持ち鎌と種類は異なるが、草を刈る鎌を持っても、これを上手に扱う人が少なく、若者にとっては、力任せに軍手をした手で引き抜く方が手っ取り早いようだ。先日、玉川校舎で体育会の学生たちがグランドの草刈りに精を出していた。刈ったり、引き抜いたりした草を大きなビニール袋に詰めて、焼却場へと運ぶといった按排であった。

終わった学生は、アイス・キャンディを一本ずつ食べて、達成感を満喫していたようだ。とはいっても、なれない草刈りであったことは、その後を見て吾人の目には歴然な様相であった。とは言え、この行事を継続していくことで、きっと草とりのコツも身につくことだろう。最初の一歩の体験である。大勢の学生が参加できる仕組みも今後考えても良かろう。

《補助資料》
徳冨蘆花『草とり』〔岩波文庫刊〕「青空文庫
http://www.aozora.gr.jp/cards/000280/files/1707_21315.html 所収
玉川校舎にて〔萩原義雄:写真撮影〕

草とり