花見図(個人蔵)

花見図(個人蔵)

萩原 義雄 記

花の便りが次第次第に声高に報知され、春の跫音となってその時季を迎えようとしています。
江戸時代の一茶の句にも

春ぢや 〜 と心叱れど寒いぞや 一茶 (繰り返し記号の「くの字点」は、~で代用)

と心躍らせつつも身に感ずる季節感を「寒いぞや」と端的に句述しています。近くは、森下典子(もりしたのりこ)作『好日日記』(こうじつにつき)で、「疲れたら、季節の中にいれば、それでいい。どこかへ行こうとしなくても、日本は季節をめぐっているのだ。〈中略〉私たちは、季節を追い抜いて先へ進むことも、逆らって同じ季節にとどまることもできない。いつも季節と共に変化して、一瞬の光や、樹々を吹きすぎる風に心を立て直し、降りしきる雨音に身を任せて自分を癒(いや)したりしているのだ。
〈中略〉私たちは、季節のめぐりの外ではなく、元々、その中にいる。だから、疲れたら流れの中にすべてをあずけていいのだ……。」〔一二六頁三行~一五行〕
と記載表現しています。この作品は、『日日是好日』(にちにちこれこうじつ)という映画化された作品の続編としてPARCO出版から刊行されています。

本学では、種月館の駒沢公園側に面した地で低層建造物の作業が急ピッチで進められており、春三月の恒例行事である卒業式を目途に進められいます。ここは、九号館校舎があった跡地利用する場所となって新たに誕生するところとなっています。この低層建造物が春夏秋冬の季節をつないで多くの学生の憩いの場となるのも楽しみの一つではないでしょうか。

二〇一九年 河津桜(著述者撮影)

二〇一九年 河津桜(著述者撮影)