萩原 義雄 識

今、吾人は、日本語学(=和・漢・洋の語)を博物学の視点(「一見は百聞に如かず」の立ち位置にして、常に五感(=視覚・聴覚・嗅覚・触覚・味覚)を働かせ、現物とのつきあわせする姿勢)で物事の虚(=毒物)と実(=効能)とを見定めながら、各々が持続する時(長くは四季の移り変わり、短くは朝・昼・夜)と空間(=自然と社会そして文化)を意識し、浅く広く深くと整えながら繰り返し、ものごとのあるがままの特異性を明らかにし、ことばや図絵といった表示文化にのせて表現することを日々の学事(ものまなび)としてきている。
 
では、どのように「ことばあつめ」をするのか、実際のことば採取の用例を見ておこう。
 
(1)現代の語、特有な文字づかい「~」「!!」符合字
①トルコの「のび~る」アイスクリーム。②ウニ~。ん~。うめぇぇぇぇ。③うまみ~、うまぁ~い。④食べて食べて食べるぞ~。⑤コク旨ピリッ!! 。⑥かんぱ~い。
 
(2)漢字文化圏での日常用語集
漢語A
「観賞(カンシヨウ)」「甘味(カンミ)」「機運(キウン)」「金箔(キンパク)」「豪華(ゴウカ)」「俊敏(シユンビン)」「贅沢(ゼイタク)」「探検(タンケン)」「堪能(タンノウ)」「焙煎(バイセン)」「沸沸(フツフツ)」「麵(メン)」=「麺」「麪」
漢語B
「美味(うま)すぎ」「絹糸(きぬいと)」「宝箱(たからばこ)」「出汁(でじる)」「町家(まちや)」「床板(ゆかいた)」「指輪(ゆびわ)」
漢語C
「 超細芯(チヨウほそシン)」「美肌(ビはだ)」「宝石箱(ホウセキばこ)」「役割(ヤクわり)」
漢語D
「魚影(サブマリン)」「麺(ヌードル)」「理想郷(ユートピア)」「現実(リアリーティ)」「献立表(リスタ)」
 
(3)キャッチフレーズ
① 推(お)しといつまでも。②怒られもせず、褒められもせず(オール・ノット技法)。
僅かな時のなかで、瞬く間に拾い上がることば群となっていることにお氣づきだろうか。この一連の相関図へと展開する。これを「ことばの魔術師」となって読者の皆さまも展開してみたらどうだろうか。最初は基盤となる語を自身で決定し、樹状図式(=木に根、幹、枝、葉、花、実)に見立てて各々のことばを宛ててみる。やがて、 詩(ポエム)になったり、物語に変幻自在に紡ぎ出せるであろう。
そして今、人は人との交流をしたくて、こゝろから思い、動き始めている。共に歩もうとするその勇氣と希望を大切にしたい。きっと、ご自身でもことばの文化交流が稔りの世界に到達すると信じて静かに見届けていたい。
 
【注記】「~」「!!」符合文字は、漫画「ジョジョの奇妙な冒険」Part 4 ダイヤモンドは砕けないに登場する、虹村億泰の台詞「ゥンまああ〜いっ」などから派生した。
【注記】柚木麻子(ゆずきあさこ)著『オール・ノット』〔講談社刊〕第一章書き出し「唐突に目の前にさしだされたあたたかな飲み物に、真央(まお)はとまどった。「よろしければ、どうぞ」とおばさんは言った。」
【注記】樹上図は、「表型的樹状図(フェノグラム phenogram)」などと呼ばれる。