萩原 義雄 識

時節のめぐりは目まぐるしく、日の出時間以上に日没の暗くなる時間が夕方五時を俟たずまでもなく、明かりを灯す時刻も日増しに早まってきている。窓辺の陽差しも屋内の奥深いところへとジワジワとゆっくりながら迫ってきている。一日になせる決めた運びごとも思いのほか捗らず、氣づけば僅かばかりとなっていたり、云えば凡てが短くも思えてくる。

これとは逆に部屋の塵埃もいつのまに溜まりやらで、すべきことまでが山積みとなっていく気にもなってしまう。

片づけと云う作業は、日頃からコツコツとするに越したことはないのだが、物事に集中しすぎるときとなると、途方もなく多くの時間が費やされていたりもする。人と人とが持ち合わせの通信機能を使って、情報会話するのも良しごとになっていく。

実際、多くの人が溜まりやすいものを挙げてみると、⑴衣類、⑵書類、⑶書籍、⑷文具などなどの物が列挙されよう。時を経た物品は骨董品とも呼ばれ、孰れも旨く物品交換して、次の良き担い手に廻していくことで、中古の品々も、譬え物持ちと呼ばれたとしても捨てたものではなくなる。此の作業を商いとするのではなく、大切に使いこなしていくことで、その不可価値も自ずと高めていくことになるのではと思う。此のわずかな作業を最優先にすることで、人との交易のポイントともいえる玄関口にもなっていくであろう。

物の担い手は、能芸の源を生みだし、交流の宴や季節ごとの変わらぬ行事そのものも花開くというものとなる。となれば、それに相応しい場を準備設定することの大切さを忘れてはなるまい。

今年は、大阪万博が当にそれであったと見ている。此の場所から八方に広がって、現在そこに集積した一つひとつが各地へと分散化し、各々の成長発展をはじめていくことになる。

見定めは、何時如何なるところでも捨てがたいものとなる。

十一月には、紀念とも言える「文化の日」が予定され、その数十日の吾人達の言動は、文化力を高めてみせることに繋がっていく。古より「○○道の手引き」という題目で、茲に具言化するまでもなく、多種多様な入門手引き書が存在する所以ともなっている。
 
《補助資料》
小学館『日本国語大辞典』第二版
て-びき【手引】〔名〕(古くは「てひき」とも)(1)手で引くこと。手で引き出すこと。*古今和歌集〔九〇五(延喜五)~九一四(延喜一四)〕恋四・七〇三「夏びきのてびきの糸をくりかへしことしげくともたえむと思ふな〈よみ人しらず〉」*宇津保物語〔九七〇(天禄元)~九九九(長保元)頃〕国譲上「御くるまには四位五位、ありとある人ふさにつきて、てひきにひく」*栄花物語〔一〇二八(長元元)~九二頃〕音楽「御車は中門の外よりてひきにて入らせ給」*手〔一九六三〕〈立原正秋〉「手挽きの鋸にも、こちらの感情が通いあえる気がしたが」(2)導くこと。案内。また、それをする人。*高野山文書-文永八年〔一二七一(文永八)〕六月一七日・神野猿川真国三ケ庄々官連署起請文(大日本古文書一・四四七)「一、強竊二盗并放火事。右、格式之所判、罪責頗不浅、而云手引、云下手、無庄家、況庄官所従中、粗有其聞歟」*太平記〔一四C後〕九・主上々皇御沈落事「六波羅殿の銭を隠して、六千貫埋れたる所を知て候へば、手引申て御辺に所得せさせ奉らん」*日葡辞書〔一六〇三(慶長八)~〇四〕「Tebiqiuo(テビキヲ)スル〈訳〉手をとって案内する」*浄瑠璃・神霊矢口渡〔一七七〇(明和七)〕二「其お疑ひ御尤、論より証拠手引(てびキ)して、此城を乗取せ」*落語・燃切り〔一八九一(明治二四)〕〈四代目桂文楽〉「貴郎(あなた)と小夏の交情(なか)は小哥の手引だらうと思はれるかと思ひやしてネ」(3)盲人などの手をひいて導くこと。また、その人。*日葡辞書〔一六〇三(慶長八)~〇四〕「Tefiqi(テヒキ)〈訳〉盲人を案内する者」*浮世草子・傾城禁短気〔一七一一(正徳元)〕三・四「私は手引(テヒキ)じゃござらぬ。人に取付ふより、似合ふたやうに杖に取付給へ」*狂歌・徳和歌後万載集〔一七八五(天明五)〕五「座頭の坊たのむは手びき足まかせ旅の空へと思ひつく杖」(4)船の帆の手縄をひく役。帆をあやつることに関して指揮する役。*合武三島流舟戦要法〔一七九五(寛政七)〕天文下「手引は順風・ひらき風ともに其船に余るを面楫へなりとも、取楫へなりとも手を引て、吹きちらせ〈略〉帆の高下も指図する役也」(5)ある物事を知るための手ほどき。また、そのための書物。*競馬〔一九四六(昭和二一)〕〈織田作之助〉「小心な男ほど羽目を外した溺れ方をするのが競馬の不思議さであらうか。手引きをした作家の方が呆れてしまふ位、寺田は向う見ずな賭け方をした」*啾々吟〔一九五三(昭和二八)〕〈松本清張〉七「いわば民権論の手引き風の本であったが」(6)かかわりあい。てづる。つて。えん。縁故。*経国美談〔一八八三(明治一六)~八四〕〈矢野龍渓〉後・九「今図らずも拙き射芸が手引と為り」*落語・情死の情死〔一八九六(明治二九)〕〈四代目橘家円喬〉「上方時分の御心易い方の手曳(テビキ)を持ちまして立派な御家へも御出入りが出来」*家庭の幸福〔一九四八(昭和二三)〕〈太宰治〉「自分は親戚の者の手引きで三鷹町の役場に勤める事になったのである」(7)「てびきいと(手引糸)」の略。【方言】(1)手で引き出す生糸。《てびき》長野県上伊那郡488下伊那郡492(2)道しるべ。指道標。《てひき》山梨県南巨摩郡463静岡県富士郡(道しるべの積み石)012(3)襖(ふすま)の引き手。《てひき》島根県隠岐島725(4)結婚前の関係。《てびき》長崎県五島054(5)酒肴(しゅこう)用の大皿。《てびき》三重県志摩郡054鳥羽市584(6)(「一度打った手を引っ込める」の意から)碁・将棋などで「待った」をすること。《てっぴ》山形県139147【発音】〈なまり〉テンピキ〔茨城〕〈標ア〉[テ][キ]〈ア史〉鎌倉〓〓〓〈京ア〉[テ]【辞書】文明・日葡・ヘボン・言海【表記】【手引】文明・ヘボン・言海