萩原 義雄 記

四年に一度のスポーツの祭典〝オリンピック〟競技がブラジル国リオデジャネイロ市で無事終焉した。継いで、九月七日から一八日に亘って同じ競技施設でパラリンピックが開催される。どのようなスポーツ祭典となるのかも、これまた楽しみでもある。と言うのも、各国のアスリートが繰り広げた勝利結果の感動をインタビューに答えていくからである。

114

『千字文』

今回のオリンピックでも、女子100メートル背泳ぎで銅メダルを獲得した中国の傅園慧(ふえんけい)〈20〉選手のインタビューに「洪荒の力を使った」(ファンタジー小説に登場する人物が繰り出す究極の力と同じように力を振り絞ったという意味合い)と話したことから傅選手に「洪荒少女」の異名で、ネット上に写真、似顔絵と共にこの「洪荒の力」が飛び交ったからだ。この「洪荒」の語源は、中国六世紀に梁の武帝家臣であった周興嗣〈『梁書』に齊の世、蕭子範(せうしはん)が撰という説もある〉によって編まれ、朝鮮半島を経て百濟王が遣わした王仁博士によって日本国にも招来されたという。平安時代の源順『倭名類聚抄』にこの『千字文』の註記が引用されてもいる。やがて、寺子屋の教科書にも用いられ、現代でも書道の手本として学ぶ資料でもある。この冒頭文句に「天地玄黄(テンチゲンワウ)、宇宙洪荒(ウチウコウクワウ)〈あめつちはくろくきなり、おほそらはおほいにひろし〉」とあって此に依拠する。「洪」は大きなる事、「荒」は草昧(さうまい)なりと訓じて「ひろく大(おほい)なるを」を云う。

この「ひろく大いなる力」を一人の若者が使い、世界中の若者がこのことばを知り得て、当に多くの若者がこの力を使い始めていることを知っておきたい。

話しを此より行われる「パラリンピック」に戻してみよう。合成語なる「パラリンピック」は、下半身麻痺を意味することば「パラプレジア」に「オリンピック」と合成して最初生まれました。下半身麻痺の人以外の人たちも参加する大会に発展したこともあり、「もう一つの」という意味の「パラレル」とも合成し、今の「パラリンピック」ということばとなった。オリンピックとパラリンピックとが同じ年の同じ都市で開催されたのも一九六〇(昭和三五)年のローマが発祥の地となった。実際、同一都市での開催が本格的に定着したのは、一九八八(昭和六三)年のソウルからと云われている。今回の日本人選手団は、総勢127名。オリンピック選手団に比べれば人数も少なく、報道される分量内容も削減されるだろうが、内容はこれまで以上に濃いものがあると思う。さすれば、応援も継続していきたい。